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  • 執筆者の写真Seki Albatross

RAW現像とレタッチ

「写真の色合いとかを調整するなら『RAW現像』だ。」

と言われたりします。


その一方で、

「やはり『撮って出し』こそ至上!」

とか

「レタッチなんて邪道だ」

とかも言われます。


うーん、どうもしっくり来ない。


なので、この

「RAW現像・撮って出し・レタッチ」

の関係を整理してみました。




【フィルム写真の場合】


左から右へと工程が流れています。


撮影  > フィルム現像 > 引き伸ばし >写真の完成

「露光」と「現像」は、

・フィルムへの露光・現像

・印画紙への露光・現像

2回行われます。


フィルムの現像は、フィルムメーカー指定の手順で行われます。

撮影者等による明るさや色味等の調整/編集は、「印画紙への露光・現像」の段階です。




【デジタル写真の場合】


「フィルムへの露光」=「センサーへの露光」に、

「フィルムの現像」=「RAWデータの現像=特定プログラムによるRAWデータの可視化」に相当します。


そしてこのRAWデータの現像は、

本来RAWデータが画像として見れる状態になった段階で終了しています。


つまりRAW画像見ながらそれを編集する作業は、

現像済みのフィルム画像を元にした「引き伸ばし」の工程に当たります。


RAWデータ自体はカメラの内部で生成されます。


そしてRAWデータを画像として可視化するのは、

・カメラ内部の画像エンジンによる表示

・カメラメーカーが提供する現像用ソフトを使った表示

・各社のRAWデータ取り扱いが可能な特定のソフト(LightRoom等)による表示

の3パターンかと思います。


それぞれの方法では、RAWデータに含まれている撮影時の設定情報、またはそれに相当する互換データを元に

・レンズの歪曲補正

・シェーディング補正

・色温度補正

等を反映した形で画像を表示します。

(※設定で反映させない場合もあります)


本来の意味の「RAW現像」は、ここまでの工程で終わっています。

そして、ここまでの段階で撮影者が何らかの調整/編集を加えることはありません。



「画像の調整」はこの後の工程で行われるのですが、

なぜかその画像調整のことを「RAW現像」と呼ぶようになっています。


本来の意味に忠実な表現をするなら

「現像済みのRAW画像を元にしたレタッチ作業」

となるはずなんです。



そして出来上がったRAW画像(=フィルム画像に相当)からの引き伸ばし作業に当たる

汎用画像データ(JPEG等)の作成には、大きく分けて3種類の方法があります。



●汎用画像データ作成方法 その1

 カメラの中でRAW現像(いわゆる「撮って出し」)


 一番普通に行われている方法。

 デジタル一眼でもスマホでも、最も一般的。

 RAW現像をカメラに任せた結果として得られたJPEG画像。

 これがいわゆる「撮って出し」

 色味や明るさ等の調整/編集はカメラ内の画像エンジンの機能で行われます。

 

 これに対して、

 ・RAWデータをカメラ内で保存

 ・カメラ内の画像エンジンを手動で操作

 ・色味や明るさ等の調整を撮影後に行う


 これを「カメラ内RAW現像」と呼びますが、

 手動でやってることは本来の「現像=可視化」ではなく

 画像の調整作業=引き伸ばし作業工程になります。




●汎用画像データ作成方法 その2

 カメラの外で、RAWからJPEG等を作成(いわゆる「RAW現像」)


 カメラ側でRAWデータを保存。

 そのRAWデータをPC等の別ソフトを使って

 ・画像表示(現像)

 ・調整/編集(レタッチ)

 して汎用画像(JPEG等)を作る。


 この「現像済みのRAW画像を元にしたレタッチ作業」

 一般的には「RAW現像」と呼んでいます

 




●汎用画像データ作成方法 その3

 カメラの外で、JPEG等からJPEG等を作成(いわゆる「レタッチ」)


 基本的には「その2」と同じ。


 ただ調整/編集の元となるデータがRAWデータではなく、

 JPEG等の調整/編集済みデータとなります。




先にも述べた通り「本来のRAW現像」はフィルム現像に相当するものなのですが、

「一般的に言われているRAW現像」

「現像済みのRAW画像を元にしたレタッチ作業」

のことです。


そして、一般的に「レタッチ」と呼ばれているものは

「調整済みのJPEG画像を元にしたレタッチ作業」

であると言えます。


つまりやってることは同じなのです。

材料となるデータの質に違いがあるだけです。




「色味や明るさを調整するにはRAWデータが必要だ!

と力説する方も居ますが、これも違います

「必要」とは言い切れません。


別にJPEGデータからのレタッチでも問題ないケースは多いです。



どういうことか?


JPEGデータよりRAWデータの方が情報量は多いです。


JPEGデータはRGB各色8bit(RGB3色なので8bit=256段階の3乗=16,777,216色)

RAWデータは各色12~16bitの情報量。


12bitの場合、2の12乗=4,096の3乗=68,719,476,736(約687億2千万色)。

14bitになると、これが約4兆4千万色にもなる。

※ちなみに人の目が識別出来る色の数は、ざっと1,000万色程度らしい。


つまり、RAWデータの方がより細かな色調を記録しているということで、

明るさや色味を調整する場合の許容範囲が広かったり、

調整による変化も穏やかだったりします。


では、

JPEGはダメなの?

8bit・1670万色ってショボいの?

というと

そうではないのです。


確かにJPEGデータはRAWデータに比べれば情報量が減りますから

絶対的な許容範囲は劣ります。


しかし、

・ほぼ真っ白に飛んでしまった失敗領域を復活させたい!とか

・真っ暗に写ってしまった失敗領域を復活させたい!とか

そういう極端な調整・編集が無いならば「RAW必須」ではないのです。



・撮った花の色味を変えたい

・肌の色を明るめにしたい

・コントラストを調整したい

というような普通の調整/レタッチならば、JPEGデータによるレタッチでも

全然問題なく出来る場合が多いわけです。



それどころか、カメラ内で生成されたJPEGデータは

カメラの画像エンジンが様々な調整を施した結果です。

・レンズ毎の画像の歪みを修正

・周辺光量の低下も修正(シェーディング補正)

・様々なノイズ低減処理


これらの調整を経たJPEGデータが普通の編集にすら耐えられない低品質なものならば、

お使いのカメラの画像エンジンは使い物にならないと言ってるようなものです。


貴方のカメラの画像エンジンは、そんなにショボい物ですか?




ただここに落とし穴があります。


よくプロ写真家()の解説で

「RAWとJPEG両方保存してますが、JPEGは確認用ですね。

 納品にはやはりRAWから仕上げたものを使います。」

とか言ってるじゃないですか。


そういう方のカメラ側の設定を見ると、

JPEGの画像品質が低くなってることが多いんですよ。


画像品質というのは、例えば

L-SuperFine、M-Fine、S-Standard

みたいなやつです。


これらは主に保存画像のサイズとJPEGデータの「圧縮率」を指定しています。

そして、この保存設定の品質を下げる(=圧縮率を上げる)とJPEG画像は酷い状態になります。


そして

「自分で品質を低くしたJPEG画像 vs 高品質なRAW画像」で

レタッチの耐性比較をしてドヤ顔してる「プロ」

がけっこういます。

注意してください。



こちらの画像を見て下さい。

これはPhotoshopで画質100で保存したJPEG画像です。


ヒストグラムを見ても、元のRAWデータとほぼ同じの綺麗な状態になっています。

つまり情報量がかなり多い。


で、画質を落としていってみます。


画質80

あまり変わりません。













画質60

ヒストグラムのデコボコが目立ち始めます。













画質40

ヒストグラムが櫛状になっていき、画像の空に等高線のような段差が。












画質20

もうヒストグラムはガサガサです。

空の段差も酷い。












カメラで保存する時、あるいはRAW現像ソフトで保存する時に

画質設定を最高にしてない場合、JPEG画像の許容範囲は大きく落ちてしまいます。


JPEG画像をレタッチしてすぐに破綻してしまう場合

その原因の多くはこの保存画質=圧縮率にあります。



カメラの画像エンジンは、しっかり仕事をしています。

・色温度やコントラストを調整したりするだけでなく、

・ノイズを低減したり

・レンズの収差を補正したり

・周辺光量を調整したり、

画像に対して色々な処理をしてくれてます。


いわゆるRAW現像ソフトでもこれらの処理はしてくれますが、カメラに内蔵された

画像エンジンの方が綺麗に処理してくれるケースも少なくありません。


だとすると、

・お使いのカメラの画像処理エンジンが「まとも」なもので

・極端な調整/編集を行わないならば

カメラ内で高画質=低圧縮率で保存されたJPEGデータを元に調整/編集する方が良い結果につながるというケースもあるわけです。



何でもかんでも調整・編集するならRAW現像必須!

と叫ぶのではなく、


自分がやろうとしている調整/編集に適した元データは

RAW?JPEG?どっちだろう?

と、一考してから作業に取り掛かった方が良いと思うのですよ。





<追記>


と、ここまで読んで頂いた方の中には

「写真とディスプレイの表示を一緒にすんなよ。」

「写真ってのはな、紙に焼いてナンボやねんで。」

とお怒りの方もいらっしゃるかと思います。


でも、それも違います。


●フィルム写真の基本的な完成形は、引き伸ばし機で露光/現像された印画紙です。


●デジタル写真の基本的な完成形は、ディスプレイに表示された画像です。


それぞれの写真は、完成形が異なります。



「は?プリントしないの?」


と言われるかもですが、

印画紙に焼くのとプリンターで印刷するのは全く異なることです。


印刷は、その元データとして

・フィルム

・印画紙に焼かれた写真

・RAWデータ

・JPEGデータ

等々を扱うことが出来ます。


プリンターで写真を印刷するのは、印刷=インクの世界の話です。

全ての色を足すと「黒」になるCYMKの世界の話です。


たとえ媒体が同じような「紙」であっても、


・乳剤+露光+現像で出来上がる印画紙の画像

        と

・インクによって印刷される紙上の画像


は、違うものです。



もし比較するならば、


・フィルムからの印刷

     と

・画像データからの印刷


が適切なのではないでしょうか。








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